スマ(Suma)
ステビア(Stevia)

ステビアは多年生の高さ1m程の潅木で、 長さ2~3cmの葉を持ちます。植物学的には、南米の北部が原生地であるアステル種として分類されますが、 アマンバイやブラジルとパラグアイの国境付近のイグアクの高地に自生しているのが見られます。また、 ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、中米、イスラエル、タイ、中国などで商業生産されています。

南米におけるステビアの伝統的利用法

ステビアの葉は何世紀もの間ブラジルやパラグアイのに住む先住民の間で甘味料として利用されてきました。 パラグアイのガラニインディアンではステビアを『kaa jhee』の名前で呼び、伝統的にマテ茶に甘みを加える用途に使用してきています(1)。 また、マテ茶以外の薬用茶や薬用食の甘味料としたり、肥満、高血圧、胸焼け、尿酸レベル低下など、薬用的な用途においては強心剤として用いられています(2)。

ステビアの甘み成分に関する研究

16世紀にスペインの入植者が、南米先住民が古代よりハーブティーの甘味料として使用している植物があるとの知らせをスペイン本国へ送ったのが、西欧とステビアの初めての出会いとなりました。 19世紀に入った頃からヨーロッパでのステビアに対する関心は高まりを見せ、調査団がブラジルへ送られ、ステビアに関し聞き取り調査が開始され、"一枚の葉がひょうたん一本分の渋味のあるマテ茶を甘くする"という表現に象徴される実態が徐々に明らかにされて行きました。
1899年にパラグアイの植物学者Moises S. Bertoniによりステビアに関する研究レポートが書かれたのを皮切りに、1900年以降同氏によりステビアに関する初期の研究論文がいくつか発表されています。 グリコシドと呼ばれる8種類の優れた植物化学成分が発見された後、1931年にステビアの甘みの要因となっている構成物質に関する研究が発表されています(3)。この8種類のグリコシドの内、ステビオシドと呼ばれる成分が最も甘いと考えられ、サッカロースの300倍の甘みがあることが実証されています(4)。 ステビアの葉に含まれているグリコシドの中でも最も量が多いのが、ステビオシドで6~18%の含有があります(4)(5)。ステビオシドは0.4%濃度のスクロースの300倍、4%濃度のスクロースの150倍、10%濃度のスクロースの100倍の甘みがあると考えられています(5)。
自然甘味料として非常に高い関心が持たれていたことから、ステビアは毒物学的な研究も含めて様々な研究の対象となってきました(5)。 ネズミ、ウサギ、モルモット、鶏を使った動物実験の結果、ステビオシドは構造的に変化することなく排出されることが判り、急性毒性の研究では毒性が無いことが実証されています。 また、生殖能力への影響や突然変異誘発性、遺伝的毒性もないことも確認されています(5)。

世界市場でのステビアの位置づけ

ステビアが食品添加物として認可されている日本とブラジルでは、ステビアエッセンスは安全なノンカロリー天然甘味料として20年以上に渡り広く利用されています。 現在日本がステビアの葉とエッセンスの世界最大の消費国で、醤油、漬物、菓子類、ソフトドリンクなど多くのアイテムに甘みを加える用途で利用されています。コカコーラなど多国籍企業も日本やブラジルなどステビアが食品添加物として認可されている国においては、ニュートラスウィートやサッカリンの代替甘味料としてステビアエッセンスを利用しています。 一方、米国ではステビアの甘味料や食品添加物としての使用は禁止されていますが、これは100%ナチュラルであり且つパテントを持たない安価なステビアが、高価であり且つパテントに固められた既存の合成甘味料の市場を奪うことを恐れたノンカロリー甘味料メーカが、自社の権益を守るために行っているロビー活動によるものであるとの見方が正しいようです。 米国ではステビアは食品或いは補助食品としての用途でのみ輸入販売することが許可されているのが現状です(6)(7)。

ステビアの血圧効果、血糖値低下作用

ステビアは、優れた甘味料であると同時にブラジルのハーブ医療では血糖値の低下、血圧降下作用、利尿作用、強壮効果があるとの考えられています(8)-(11)。 糖尿病や高血圧の治療や強心薬としてステビアは利用されています(12)。
米国でも自然療法士が同様の方法でステビアを利用しています。そしてその用途については、幾つかの臨床的な試みにより既に評価されています(13)。1996年に発表されたネズミを使った臨床実験では加工していないステビアエッセンスには血圧効果作用があることが実証されていて、甘味料としての用途よりも大目にステビアエッセンスを服用すると、通常の血圧或いは高血圧の動物において血管拡張効果があることがその実験で判っています(14)(15)。
ステビアエッセンスと分離されたグリコシドに関する初期の研究では、血圧効果作用と共に利尿作用があることも実証されており、1991年には同じブラジル人科学者により行われたネズミを使った実験においてステビアには全身の血圧を降下させる作用があることが記録されています(16)。
また、別のブラジル研究班は、「すべての任意被験者において、テスト期間中とその次の晩なにも食べずにおいた後、原形質ブドウ糖レベルの著しい低下がみとめられた」と報告し、ステビアの葉から抽出した水性エッセンスには血糖値を低下させる作用と人体におけるブドウ糖許容値を高める効果を実証しています(17)。
一方、ステビアに含まれている各々のグリコシドが持つ血糖値低下特性に関しては、ステビオル、イソステビオル、グルコシルステビオルの3つのグリコシドがブドウ糖生産に作用する、と結論づけるレポートがブラジルで発表されています(18)。 ステビアの主要甘み成分であるステビオシドにはこういった効果がないことが判っています(18)。
1978年に行われたネズミを使った実験では、血圧値を正常化したり、心拍を整えたりと言った強心作用や、その他心肺機能強化の効能について報告されています。
このようにステビアについては様々な研究報告がなされていますが、今尚多くの研究者達はステビアのポテンシャルに熱い視線を注ぎ続けています。(19)(20)。

【出典】
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