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森と人間のおいしい関係でアマゾンを創る

ペルーアマゾンの森を再生するキズナ農場。プロジェクトの開始から12年が経ちその成果が実りつつあります。「森を創る」ことで見えてきた豊かな未来とは?

2023年10月、12年にわたる「森を創る」活動を紹介したポップアップイベントアマゾンの創作キッチンを開催。JICA(国際協力機構)の専門家としてプロジェクトに参加し、ペルーでの活動を継続的に取り組んでいる料理研究家の按田優子さんによるグリーンナッツの創作料理や飲み物を楽しみながら知られざるアマゾンについて知る貴重な機会となりました。

アグロフォレストリーで自然の循環を取り戻す

キズナ農場の主宰者であるペルー在住の橘谷エルナンさんによると、ペルーは世界4位の熱帯雨林面積を有し、地球上に存在する117の生態系のうち84が観察できるといいます。しかしその多様性の源であるアマゾンが開発による伐採などで2000年代に入って約280万haも消失、現在も毎分サッカーグラウンドの1.5倍もの面積のアマゾンが消えている危機的状況。アマゾンの持続可能な開発モデルを提示するため2012年に牧草地だった場所に樹木と農作物を一緒に植え、植物・生態系の相互作用によって、森林機能を回復させる方法「アグロフォレストリー(森林農法)」に着手。草取りから始めて12年育った高木が直射日光や強い風雨から若い木を守り、森林の根が張ることにより土壌浸食を防いで、雨水の浸透機能も高まっています。木の根を通じて土壌深くまで栄養成分がゆき渡る「人間と自然が共生する里山のようなサイクル」が出来つつあり、落ちた葉は雑草の生長を抑制し土の養分となり、最近ではきのこや果実など土地にもともと存在しなかった種が育つ2次林の恩恵も出始めています。アルコイリスの代表の大橋則久さんは「森が育ち、ようやくスタート地点に立てた。土地に負荷を与えることなく栽培したサチャインチを始めとするペルーの植物資源を世界中に広めたい」と話します。
 

森が生き返り人が救われる

印象的だったのはパンデミック直前の2020年2月に按田さんが現地入りした時のお話。到着直後に移動禁止令が発令されたことで、キズナ農場に数か月間取り残される状況に。「森が育っていなかったら、物資も届かず食べ物もないなか私たちは生きることが出来なかったでしょう。(按田さん)。実をつけ始めていた植物が文字通り糧となり九死に一生を得たといいます。毎日見つける植物でレシピを試せたのは幸運という按田さんに対して、その「無茶ぶり」が大変だったと笑う橘谷さん。人間の手を入れすぎるのは勿論、入れなさすぎてもいけない自然。そこに人に知恵と手が介在することで、アマゾンの森は食糧庫となり、時に薬箱にも変わることを体験を通じて学ぶ。キズナ農場での様々な活動を通じて、自然に人間が適切に手を入れることで自然がよみがえり、大いなる恵みがもたらされることがわかります。

左から:キズナ農園を主宰する橘谷エルナンさん、料理研究家の按田優子さん、アルコイリス代表大橋則久